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伊勢物語翻刻 by 片島諒

伊勢物語各種影印本の翻刻を行います

①河野美術館蔵実隆筆本・第百一段《さく花のしたにかくるゝ人をおほみ》

【河野美術館蔵実隆筆本】65丁表~65丁裏
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①むかし左兵衛督なりける在原のゆきひら
②といふありけりその人の家によきさけあ
③りときゝてうへにありける左中弁ふちはら
④のまさちかといふをなむまらうとさねにて
藤原良近 貞觀十二年正月右中弁十六年✼轉左中弁
⑤その日はあるしまうけしたりけるなさ
⑥けある人にてかめに花をさせりその花
⑦のなかにあやしきふちの花ありけり花
⑧のしなひ三尺六寸はかりなむありける
⑨それをたいにてよむよみはてかたにある
⑩しのはらからなるあるしゝたまふときゝ
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①てきたりけれはとらへてよませけるもと
②よりうたのことはしらさりけれはすまひけ
③れとしゐてよませけれはかくなん
④  さく花のしたにかくるゝ人をおほみ
⑤  ありしにまさるふちのかけかも
⑥なとかくしもよむといひけれはおほきお
⑦とゝのゑい花のさかりにみまそかりて藤
⑧氏のことにさかゆるをおもひてよめるとなん
⑨いひけるみなひとそしらすなりにけり

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学習院大学蔵伝定家筆本】74丁裏〜76丁表
⑩むかし左兵衞督なりける在原の
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①ゆきひらといふありけりその人の家
②によきさけありときゝてうへにあり
③ける左中弁ふちはらのまさちかと
④いふをなむまらうとさねにてその
藤原良近 貞觀十二年正月右中弁十六年✼轉左中弁
⑤日はあるしまうけしたりける
⑥なさけある人にてかめに花を
⑦させりその花のなかにあやしき
⑧ふちの花ありけり花のしなひ
⑨三尺六寸はかりなむありける
⑩それをたいにてよむよみはてかたに
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①あるしのはらからなるあるしゝ
②たまふときゝてきたりけれはとら
③へてよませけるもとよりうたのことは
④しらさりけれはすまひけれとしゐて
⑤よませけれはかくなん
               [おイ] 
⑥  さく花のしたにかくるゝ人をほみ
⑦  ありしにまさるふちのかけかも
⑧なとかくしもよむといひけれはお
⑨ほきおとゝのゑい花のさかりにみま
⑩そかりて藤氏のことにさかゆるを
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①おもひてよめるとなんいひけるみ
②なひとそしらすなりにけり

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静嘉堂文庫本】P142~144
行平 貞觀十二年二月参議五十三左兵衞督 十四年左衞門督 十五年従三位太宰帥
元慶元年治部卿六年正月中納言六十五 八年正三位
民部卿 仁和元按察
②むかし左兵衞督なりけるありはらのゆきひらと
仁和三年四月十三日致仕 寬平五年薨
                [きゝてイ] 
③いふありけりその人の家によきさけありと
   藤昌近 貞觀十二年右中弁 十六年左中弁
④うへにありける左中弁ふちはらのまさちかといふ
⑤をなむまらうとさねにてその日はあるしまう
⑥けしたりけるなさけある人にてかめに花を
⑦させりその花のなかにあやしきふちの花
⑧有けり花のしなひ三尺六寸はかりなむ有ける
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①それをたいにてよむよみはてかたにあるしの
②はらからなるあるしゝたまふときゝてきたり
③けれはとらへてよませけるもとよりうたの
④ことはしらさりけれはすまひけれとしゐて
⑤よませけれはかくなむ
⑥  さくはなのしたにかくるゝ人をおほみ
⑦  ありしにまさるふちのかけかも
⑧なとかくしもよむといひけれはおほきおとゝの
⑨ゑい花のさかりにみまそかりて藤氏の
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①ことにさかゆるを思ひてよめるとなむいひ
②けるみな人そしらすなりにけり

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《異同㈠》
A.河野美術館本65丁表③……よきさけありときゝて
 学習院大蔵本75丁表②……よきさけありときゝて
               ✼✼[きゝてイ]
 静嘉堂文庫本P142③………よきさけありと
[ありときゝて━━天学習・天冷泉・天河野・天細川・定嵯峨・根良経・根九家・根為相・根承久・根理家・根千葉・根文暦・根智蘊・大為氏・大谷森・大阿波・参為家・非通具
 ありと━━武静嘉・武尊鎮・武兼良
 (塗籠本無し)]
✼✼影印本では確認できないが、山田清市氏の翻刻によれば静嘉堂文庫本のここでは[きゝてイ(朱)]と行間に書き込まれているようだ。
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B.河野美術館本65丁裏④……人をおほみ
             [おイ]
 学習院大蔵本75丁裏⑥……人をほみ
 静嘉堂文庫本P143⑥………人をおほみ
[人をおほみ━━天河野・天冷泉・武静嘉・武尊鎮・武兼良・根智蘊・根承久
 人をほみ━━天学習・定嵯峨・根文暦・大為氏
 人おほみ━━天細川・根理家・根千葉・根良経・根九家・根為相・大谷森・大阿波・参為家・非通具]
※塗籠本はこの段無し。
※ここは現在ほぼ全てのテキストが『人を多み』としているが、実際は非定家本系の多くが『人おほみ』『人をほみ』であるのを含め『人おほみ』『人をほみ』となっている写本の方が多い。(塗籠本はこの段無し)
伊勢物語の中の助詞『み』の使われ方を見ると、天福本でここ以外で『み』が使われている12箇所中「〜を〜み」となっているのは103段の「夢をはかなみ」と112段の「風をいたみ」だけであとの10例は『を』を伴わずに使われているのでここも『人多み』が本来の形か。

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《異同㈡》無し

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《異同㈢》無し

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《備考》
学習院本の勘物の✼の字を小林茂美氏は『秋』、池田亀鑑氏は『轉』と翻刻している。字体から見て『秋』には見えないと思うが。 
http://jigen.net/kanji/31179(秋)
http://jigen.net/kanji/36681(轉)
学習院大学蔵本f:id:nobinyanmikeko:20170320000427j:plain
静嘉堂文庫本の行平についての勘物の『按察』を山田清市氏は『按祭』と翻刻しているが、どう見ても宀が付いていると思う。
f:id:nobinyanmikeko:20170320001117j:plain

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宮内庁書陵部蔵冷泉為和筆本第101段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/04/06/182833
九州大学図書館蔵伝三条西実隆筆細川文庫本第101段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/05/01/202434