伊勢物語翻字 by 片島諒

伊勢物語各種影印本の翻字を行います

②宮内庁書陵部蔵冷泉為和筆本・第百一段《さく花のしたにかくるゝ人をおほみ》

宮内庁書陵部蔵冷泉為和筆本】P148~151
⑩むかし左兵衞督なりける在原の
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①ゆきひらといふありけりその人の家
②によきさけありときゝてうへにあり
③ける左中弁ふちはらのまさちかと
④いふをなむまらうとさねにてその
  藤原良近貞觀十二年正月右中弁十六年轉左中弁
⑤日はあるしまうけしたりける
⑥なさけある人にてかめに花を
⑦させりその花のなかにあやしき
⑧ふちの花ありけり花のしなひ
⑨三尺六寸はかりなむありける
⑩それをたいにてよむよみはてかたに
_____________________
①あるしのはらからなるあるしゝ
②たまふときゝてきたりけれはとら
③へてよませけるもとよりうたのことは
④しらさりけれはすまひけれとしゐて
⑤よませけれはかくなん
⑥  さく花のしたにかくるゝ人をおほみ
⑦  ありしにまさるふちのかけかも
⑧なとかくしもよむといひけれはお
⑨ほきおとゝのゑい花のさかりにみま
⑩そかりて藤氏のことにさかゆるを
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①おもひてよめるとなんいひけるみ
②なひとそしらすなりにけり

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学習院大学蔵伝定家筆本】74丁裏〜76丁表
⑩むかし左兵衞督なりける在原の
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①ゆきひらといふありけりその人の家
②によきさけありときゝてうへにあり
③ける左中弁ふちはらのまさちかと
④いふをなむまらうとさねにてその
藤原良近 貞觀十二年正月右中弁十六年轉左中弁
⑤日はあるしまうけしたりける
⑥なさけある人にてかめに花を
⑦させりその花のなかにあやしき
⑧ふちの花ありけり花のしなひ
⑨三尺六寸はかりなむありける
⑩それをたいにてよむよみはてかたに
_____________________
①あるしのはらからなるあるしゝ
②たまふときゝてきたりけれはとら
③へてよませけるもとよりうたのことは
④しらさりけれはすまひけれとしゐて
⑤よませけれはかくなん
               [おイ] 
⑥  さく花のしたにかくるゝ人をほみ
⑦  ありしにまさるふちのかけかも
⑧なとかくしもよむといひけれはお
⑨ほきおとゝのゑい花のさかりにみま
⑩そかりて藤氏のことにさかゆるを
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①おもひてよめるとなんいひけるみ
②なひとそしらすなりにけり

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静嘉堂文庫本】P142~144
行平 貞觀十二年二月参議五十三左兵衞督 十四年左衞門督 十五年従三位太宰帥
元慶元年治部卿六年正月中納言六十五 八年正三位
民部卿 仁和元按察
②むかし左兵衞督なりけるありはらのゆきひらと
仁和三年四月十三日致仕 寬平五年薨
                 [きゝてイ]
③いふありけりその人の家によきさけありと
   藤昌近 貞觀十二年右中弁 十六年左中弁
④うへにありける左中弁ふちはらのまさちかといふ
⑤をなむまらうとさねにてその日はあるしまう
⑥けしたりけるなさけある人にてかめに花を
⑦させりその花のなかにあやしきふちの花
⑧有けり花のしなひ三尺六寸はかりなむ有ける
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①それをたいにてよむよみはてかたにあるしの
②はらからなるあるしゝたまふときゝてきたり
③けれはとらへてよませけるもとよりうたの
④ことはしらさりけれはすまひけれとしゐて
⑤よませけれはかくなむ
⑥  さくはなのしたにかくるゝ人をおほみ
⑦  ありしにまさるふちのかけかも
⑧なとかくしもよむといひけれはおほきおとゝの
⑨ゑい花のさかりにみまそかりて藤氏の
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①ことにさかゆるを思ひてよめるとなむいひ
②けるみな人そしらすなりにけり

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《異同㈠》
A.冷泉為和筆本P149②………よきさけありときゝて
 学習院大蔵本75丁表②……よきさけありときゝて
                 [きゝてイ]
 静嘉堂文庫本P142③………よきさけありと
[ありときゝて━━天学習・天冷泉・天河野・天細川・定嵯峨・根良経・根九家・根為相・根承久・根理家・根千葉・根文暦・根智蘊・大為氏・大谷森・大阿波・参為家・非通具
 ありと━━武静嘉・武尊鎮・武兼良]
※塗籠本この段無し
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B.冷泉為和筆本P150⑥………人をおほみ
             [おイ]
 学習院大蔵本75丁裏⑥……人をほみ
 静嘉堂文庫本P143⑥………人をおほみ
[人をおほみ━━天河野・天冷泉・武静嘉・武尊鎮・武兼良・根智蘊・根承久
 人をほみ━━天学習・定嵯峨・根文暦・大為氏
 人おほみ━━天細川・根理家・根千葉・根良経・根九家・根為相・大谷森・大阿波・参為家・非通具]
※塗籠本この段無し。
※河野美術館蔵実隆筆本・冷泉為和筆本がともに『人をおほみ』なので定家筆天福本は『人をおほみ』であったと考えられるが、非定家本系の多くが『人おほみ』『人をほみ』であるのを考慮すると本来の形は『人おほみ』か。

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《異同㈡》無し

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《異同㈢》無し

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河野美術館蔵三条西実隆筆本第101段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2016/11/04/232754
九州大学図書館蔵伝三条西実隆筆細川文庫本第101段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/05/01/202434
伝青蓮院尊鎮親王筆本第101段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/07/10/220842