④伝青蓮院尊鎮親王筆本・第二十三段《つゝゐつの井つゝにかけしまろかたけ》
【伝尊鎮親王筆本】P34~37
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①昔ゐなかわたらひしける人のことも井のもとにいてゝ
②あそひけるをおとなになりにけれはおとこも女もはち
③かはしてありけれとおとこはこの女をこそえめと
④思ふ女はこのおとこをと思ひつゝおやのあはすれ
⑤ともきかてなむありけるさてこのとなりのおとこの
⑥もとよりかくなむ
⑦ つゝゐつの井つゝにかけしまろかたけ
[なイ]
⑧ すきにけらしもいも見さるまに
⑨をむな返し
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① くらへこしふりわけかみもかたすきぬ
② 君ならすしてたれかあくへき
③なといひ\/てつゐにほいのことくあひにけりさてとし
④ころふる程に女おやなくたよりなくなるまゝにもろ
⑤ともにいふかひなくてあらむやはとてかうちの國た
⑥かやすのこほりにいきかよふ所いてきにけりさり
⑦けれとこのもとの女あしと思へるけしきもなくて
⑧いたしやりけれはおとここと心ありてかゝるにやあら
⑨むと思ひうたかひてせんさいのなかにかくれゐてかうちへ
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①いぬるかほにてみれはこの女いとようけさうしてう
②ちなかめて
③ かせふけはおきつしらなみたつたやま
④ 夜はにやきみかひとりこゆらむ
⑤とよみけるをきゝてかきりなくかなしと思てかうちへ
⑥もいかすなりにけりまれ\/かのたかやすにきてみれ
⑦ははしめこそ心にくもつくりけれいまはうちとけて
⑧手つからいゐかひとりてけこのうつは物にもりけるを見
⑨て心うかりていかすなりにけりさりけれはかの女やまと
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①のかたをみやりて
[万十二]
② 君かあたり見つゝをゝらむいこまやま
③ 雲なかくしそ雨はふるとも
④といひて見いたすにからうしてやまと人こむと
⑤いへりよろこひてまつにたひ\/すきぬれは
⑥ きみこむといひし夜ことにすきぬれは
[ふイ]
⑦ たのまぬものゝこひつゝそぬる
⑧といひけれとおとこすますなりにけり
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【学習院大学蔵伝定家筆本】21丁裏~24丁表
⑤むかしゐなかわたらひしける人
⑥の子とも井のもとにいてゝあそひ
⑦けるをおとなになりにけれは
⑧[おとこも女も]はちかはしてありけれとおとこは
⑨この女をこそえめとおもふ女は
⑩このおとこをとおもひつゝおやの
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①あはすれともきかてなんありける
②さてこのとなりのおとこのもとより
③かくなん
④ つゝゐつのゐつゝにかけしまろかたけ
⑤ すきにけらしないも見さるまに
⑥女返し
⑦ くらへこしふりわけかみもかたすきぬ
⑧ きみならすしてたれかあくへき
⑨なといひ\/てつゐにほいのことく
⑩あひにけり
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①さて年ころふるほとに女おやなく
②たよりなくなるまゝにもろともに
③いふかひなくてあらんやはとて
④かうちのくにたかやすのこほりに
⑤いきかよふ所いてきにけりさり
⑥けれとこのもとの女あしとおもへる
⑦けしきもなくていたしやりけれは
⑧おとこゝと心ありてかゝるにやあら
⑨むと思ひうたかひてせんさいの中に
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①かくれゐてかうちへいぬるかほにて
②見れはこの女いとようけさう
③してうちなかめて
[古今]
④ 風ふけはおきつしら浪たつた山
⑤ 夜はにや君かひとりこゆらん
⑥とよみけるをきゝてかきりなく
⑦かなしと思ひて河内へもいかすなり
⑧にけりまれ\/かのたかやすにき
⑨て見れははしめこそ心にくも
⑩つくりけれいまはうちとけて
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①てつからいゐかひとりてけこのうつわ
②物にもりけるを見て心うかりていか
③すなりにけりさりけれはかの女
④やまとの方を見やりて
[新古今]
⑤ 君かあたり見つゝをゝらんいこま山
⑥ くもなかくしそ雨はふるとも
⑦といひて見いたすにからうして
⑧やまと人こむといへりよろこひてま
⑨つにたひ\/すきぬれは
⑩ 君こむといひし夜ことにすきぬれは
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① たのまぬ物のこひつゝそふる
②といひけれとおとこすますなりにけり
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【静嘉堂文庫本】P37〜41
⑧昔ゐなかわたらひしける人のことも井のもと
⑨にいてゝあそひけるをおとなになりにけれは
⑩おとこも女もはちかはしてありけれとおとこ
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①はこの女をこそえめとおもふ女はこのおとこを
②とおもひつゝおやのあはすれともきかてなむ
③ありけるさてこのとなりのおとこのもとより
④かくなむ
⑤ つゝゐつのゐつゝにかけしまろかたけ
[なイ]
⑥ すきにけらしもいもみさるまに
⑦をむな返し
⑧ くらへこしふりわけ神もかたすきぬ
⑨ きみならすしてたれかあくへき
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①なといひ\/てつゐにほいの■とくあひにけり
②さてとしころふるほとに女おやなくたよりな
③くなるまゝにもろともにいふかひなくてあら
④むやはとてかうちのくにたかやすのこほりに
⑤いきかよふ所いてきにけりさりけれとこの
⑥もとの女あしとおもへるけしきもなくていた
⑦しやりけれはおとここと心ありてかゝるにや
⑧あらむと思ひうたかひてせんさいのなかにか
⑨くれゐてかうちへいぬるかほにて見れは
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①この女いとようけさうしてうちなかめて
② 風ふけはおきつしらなみたつた山
③ 夜はにやきみかひとりこゆらむ
④とよみけるをきゝてかきりなくかなしと思て
⑤かうちへもいかすなりにけりまれ\/かのたか
⑥やすにきて見れははしめこそ心にくもつく
⑦りけれいまはうちとけてゝつからいゐかひと
⑧りてけこのうつはものにもりけるを見て心うかりて
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①いかすなりにけりさりけれはかの女やまとの方
②を見やりて
[万十二]
③ きみかあたり見つゝをゝらむいこま山
④ 雲なかくしそ雨はふるとも
⑤といひて見いたすにからうしてやまと人こむと
⑥いへりよろこひてまつにたひ\/すきぬれは
⑦ きみこむといひし夜ことにすきぬれは
⑧ たのまぬものゝこひつゝそぬる
⑨といひけれとおとこすますなりにけり
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《異同㈠》
[なイ]
A.尊鎮親王筆本P34⑧…………すきにけらしも
学習院大蔵本22丁表⑤……すきにけらしな
[なイ]
静嘉堂文庫本P38⑥…………すきにけらしも
[すきにけらしな━━天学習・天河野・天冷泉・天細川・定嵯峨・定支子・非藤房
すきにけらしも━━武静嘉・武尊鎮・武永兼・根理家・根千葉・根文暦・根智蘊・根良経・根九家・根承久・大為氏・大谷森・大阿波・参為家・非通具
をひにけらしな━━根為相・塗民局
おいにけらしな━━非実践]
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[ふイ]
B.尊鎮親王筆本P37⑦…………こひつゝそぬる
学習院大蔵本24丁表①……こひつゝそふる
静嘉堂文庫本P41⑧…………こひつゝそぬる
[こひつゝそふる━━天学習・天河野・天冷泉・天細川・定嵯峨・定支子・大為氏・大谷森・大阿波・参為家・非藤房
こひつゝそぬる━━武静嘉・武尊鎮・武永兼・根理家・根千葉・根文暦・根智蘊・根良経・根九家・根為相・根承久・非通具
こひつゝそをる━━塗民局
(無し)━━非実践]
※ここの校異の書込みは尊鎮親王筆本にはあるが静嘉堂文庫本の場合、山田清市氏の翻刻(古典文庫229)には載っていない(静嘉堂文庫本の校異の書込みは朱書きとのことで影印本では確認できず山田清市氏の翻刻に頼るしかない)。静嘉堂文庫本の脱落か、或いは山田清市氏の翻刻もれか。
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《異同㈡》無し
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《異同㈢》
A.尊鎮親王筆本P36⑧…………けこのうつは物
学習院大蔵本23丁裏①……けこのうつわ物
静嘉堂文庫本P40⑧…………けこのうつはもの
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河野美術館蔵三条西実隆筆本第23段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2016/10/20/095127
宮内庁書陵部蔵冷泉為和筆本第23段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/03/28/170407
九州大学図書館蔵伝三条西実隆筆細川文庫本第23段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/04/20/205701
九州大学図書館蔵伝藤原為家筆細川文庫本第23段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/08/29/194047