①河野美術館蔵実隆筆本・第七十八段《あかねともいはにそかふる色見えぬ》
【河野美術館蔵実隆筆本】48丁裏~49丁裏
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①むかしたかきこと申す女御おはしまし
②けりうせ給てなゝ七日のみわさ安祥寺に
③てしけり右大将ふちはらのつねゆきと
④いふ人いまそかりけりそのみわさにまうて
禪師
⑤たまひてかへさに山しなのせんしのみこ
サネ✼
人康親王仁明第四四品弾正尹号山科宮貞觀元年五月入道同十四年薨四十二
⑥おはしますその山しなの宮にたきおとし
⑦水はしらせなとしておもしろくつくられ
⑧たるにまうてたまうてとしころよそには
⑨つかうまつれとちかくはいまたつかうまつらすこ
⑩よひはこゝにさふらはむと申たまふみこよ
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①ろこひたまふてよるのおましのまうけせ
②させ給さるにかの大将いてゝたはかりたま
③ふやうみやつかへのはしめにたゝなをや
④はあるへき三條のおほみゆきせし時きの
⑤くにの千里のはまにありけるいとおもしろき
貞觀八年三月卄三日行幸右大臣良相百花亭
⑥いしたてまつれりきおほみゆきののち
⑦たてまつれりしかはある人のみさうしの
⑧まへのみそにすへたりしをしまこのみ給
⑨きみ也このいしをたてまつらんとのたまひ
⑩てみすいしんとねりしてとりにつかはす
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①いくはくもなくてもてきぬこのいしきゝし
②よりは見るはまされりこれをたゝにたて
③まつらはすゝろなるへしとて人\/にうた
④よませたまふみきのむまのかみなりける
⑤人のをなむあおきこけをきさみてまき
⑥ゑのかたにこのうたをつけてたてまつり
⑦ける
⑧ あかねともいはにそかふる色見えぬ
⑨ 心を見せむよしのなけれは
⑩となむよめりける
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【学習院大学蔵伝定家筆本】55丁裏〜57丁裏
③むかしたかきこと申す女御おは
④しましけりうせ給てなゝ七日の
⑤みわさ安祥寺にてしけり
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①右大將ふちはらのつねゆきといふ
②人いまそかりけりそのみわさにま
③うてたまひてかへさに山しなの
禪師
④せんしのみこおはしますその山
⑤しなの宮にたきおとし水はし
⑥らせなとしておもしろくつくられ
⑦たるにまうてたまうてとしころよ
⑧そにはつかうまつれとちかくはいまた
⑨つかうまつらすこよひはこゝにさ
⑩ふらはむと申たまふみこよろこひたまふて
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①よるのおまし[の]まうけせさせ給
サネ✼
人康親王仁明第四四品弾正尹号山科宮
貞觀元年五月入道同十四年薨四十二
②さるにかの大將いてゝたはかり
③たまふやうみやつかへのはしめに
④たゝなをやはあるへき三條のお
⑤ほみゆきせし時きのくにの千里
⑥のはまにありけるいとおもしろき
⑦いしたてまつれりきおほみゆきの
貞觀八年三月卄三日行幸右大臣良相百花亭
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①のちたてまつれりしかはある人
②のみさうしのまへのみそにすへ
③たりしをしまこのみ給きみ也
④このいしをたてまつらんとのたまひ
⑤てみすいしんとねりしてとりに
⑥つかはすいくはくもなくてもてき
⑦ぬこのいしきゝしよりは見るは
⑧まされりこれをたゝにたてまつらは
⑨すゝろなるへしとて人\/にうたよ
右大將依佐監右馬頭相伴歟他本也
⑩ませたまふみきのむまのかみ
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①なりける人のをなむあおきこけ
②をきさみてまきゑのかたにこのうたを
③つけてたてまつりける
④ あかねともいはにそかふる色見えぬ
⑤ 心を見せむよしのなけれは
⑥となむよめりける
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【静嘉堂文庫本】P106~109
⑥むかしたかきこと申す女御おはしましけり
⑦うせ給てなゝなぬかのみわさ安祥寺
⑧にてしけり右大將ふちはらのつねゆきといふ人
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①いまそかりけりそのみわさにまうて給ひて
②かへさに山しなのせんしのみこおはします
人康親王 仁明第四四品弾正尹 貞觀元年五月入道
③その山しなの宮にたきおとし水はし
同十四年薨四十二 号山科宮
④らせなとしておもしろくつくられたるに
⑤まうてたまうてとしころよそにはつかう
⑥まつれとちかくはいまたつかうまつらすこよひ
⑦はこゝにさふらはむと申たまふみこよろこ
⑧ひたまうてよるのおましのまうけせさせ
[かイ]
⑨たまふさるにこの大將いてゝたはかりたまふ
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①やう宮つかへのはしめにたゝなをやは
②あるへき三条のおほみゆきせし時きの
③くにの千里のはまにありけるいとおも
④しろきいしたてまつれりきおほみゆき
⑤のゝちたてまつれりしかはある人のみさ
⑥うしのまへのみそにすへたりしをしま
⑦このみたまふきみなりこのいしをたてまつら
⑧むとのたまひてみすいしんとねりしてとりにつかはす
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①いくはくもなくてもてきぬこのいしきゝし
②よりは見るはまされりこれをたゝにたてま
③つらはすゝろなるへしとて人ゝにうたよませ
右大將依佐監 右馬頭 相伴歟
④たまふみきのむまのかみなりける人のを
⑤なむあおきこけをきさみてまきゑのかたに
⑥このうたをつけてたてまつりける
⑦ あかねともいはにそかふるいろ見えぬ
⑧ こゝろを見せむよしのなけれは
⑨となむよめりける
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《異同㈠》
A.河野美術館本49丁表②……かの大將
学習院大蔵本56丁裏②……かの大將
[かイ]
静嘉堂文庫本P107⑨………この大將
[かの大將━━天学習・天河野・天冷泉・天細川・定嵯峨・根九家・根良経・根理家・根千葉・根文暦・根為相・根承久・参為家・大為氏・大谷森・大阿波・非通具・非藤房
この大將━━武静嘉・武尊鎮・根智蘊・塗民局]
※静嘉堂文庫本の校異の書込みは朱書きとのことで影印本では確認できないが山田清市氏の翻刻(古典文庫229)により補った。
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《異同㈡》無し
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《異同㈢》
A.河野美術館本48丁裏⑩……よろこひたまふて
学習院大蔵本56丁表⑩……よろこひたまふて
静嘉堂文庫本P107⑦………よろこひたまうて
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《備考》
★✼の部分、小林茂美氏は『さね』と翻刻している。(池田亀鑑氏の「伊勢物語の研究 校本篇」には振仮名部分の記載無し)。
ただ画像の通り、ここは『七子』と書かれているように見える。『七』という字形から見て、これは平仮名ではなく片仮名ではないだろうか。
学習院大学蔵伝定家筆本
河野美術館蔵実隆筆本
宮内庁書陵部蔵冷泉為和筆本
国語学辞典『カタカナ』の項より
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宮内庁書陵部蔵冷泉為和筆本第78段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/04/04/060831
九州大学図書館蔵伝三条西実隆筆細川文庫本第78段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/04/28/112656
伝青蓮院尊鎮親王筆本第78段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/06/17/203858
九州大学図書館蔵伝藤原為家筆細川文庫本第78段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/10/22/212710