①河野美術館蔵実隆筆本・第六十九段《きみやこし我やゆきけむおもほえす》
【河野美術館蔵実隆筆本】42丁裏~43丁裏
③むかしおとこ有けりそのおとこ伊勢の
④くにゝかりの使にいきけるにかの伊勢の
⑤齋宮なりける人のおやつねのつかひより
⑥はこの人よくいたはれといひやれりけれは
⑦おやのことなりけれはいとねむころにいた
⑧はりけりあしたにはかりにいたしたてゝ
⑨やりゆふさりはかへりつゝそこにこさせけ
⑩りかくてねむころにいたつきけり二日と
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①いふ夜おとこわれてあはむといふ女もはた
②いとあはしともおもへらすされと人めし
③けゝれはえあはすつかひさねとある人なれ
④はとをくもやとさす女のねやちかくあり
⑤けれは女ひとをしつめてねひとつ許にお
⑥とこのもとにきたりけりおとこはたねられ
⑦さりけれはとのかたを見いたしてふせるに
⑧月のおほろなるにちひさきわらはをさ
⑨きにたてゝ人たてりおとこいとうれしくて
⑩わかぬる所にゐていりてねひとつよりうし
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①みつまてあるにまたなにこともかたらは
②ぬにかへりにけりおとこいとかなしくてね
③すなりにけりつとめていふかしけれとわか
④人をやるへきにしあらねはいと心もとなく
⑤てまちをれはあけはなれてしはしあるに
⑥女のもとよりことはゝなくて
[古今]
⑦ きみやこし我やゆきけむおもほえす
⑧ 夢かうつゝかねてかさめてか
⑨おとこいといたうなきてよめる
[古今]
⑩ かきくらす心のやみにまとひにき
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[一説よひと]
① ゆめうつゝとはこよひさためよ
②とよみてやりてかりにいてぬ野にありけ
③と心はそらにてこよひたに人しつめてい
④とゝくあはむと思にくにのかみいつきの宮
⑤のかみかけたるかりのつかひありときゝて夜ひと
⑥よさけのみしけれはもはらあひこともえ
⑦せてあけはおはりのくにへたちなむとすれは
⑧をとこも人しれすちのなみたをなかせと
⑨えあはす夜やう\/あけなむとするほと
⑩に女かたよりいたすさかつきのさらに哥
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①をかきていたしたりとりてみれは
② かち人のわたれとぬれぬえにしあれは
③とかきてすゑはなしそのさかつきのさら
④についまつのすみしてうたのすゑをかき
⑤つく
⑥ 又あふさかのせきはこえなん
⑦とてあくれはおはりのくにへこえにけり
⑧齋宮は水のおの御時文德天皇の御む
⑨すめこれたかのみこのいもうと
恬子内親王
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【学習院大学蔵伝定家筆本】49丁表~51丁裏
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①むかしおとこ有けりそのおとこ伊
②勢のくにゝかりの使にいきけるに
③かの伊勢の齋宮なりける人のおや
④つねのつかひよりはこの人よくいた
⑤はれといひやれりけれはおやのこと
⑥なりけれはいとねむころにいたはり
⑦けりあしたにはかりにいたしたてゝ
⑧やりゆふさりはかへりつゝそこにこさ
⑨せけりかくてねむころにいたつき
⑩けり二日といふ夜おとこわれて
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[イ無]
①あはむといふ女もはたいとあはし
②ともおもへらすされと人めしけゝれは
③えあはすつかひさねとある人な
④れはとをくもやとさす女のねやちか
⑤くありけれは女ひとをしつめて
⑥ねひとつ許におとこのもとにきたり
⑦けりおとこはたねられさりけれは
⑧とのかたを見いたしてふせるに月
⑨のおほろなるにちひさきわらは
⑩をさきにたてゝ人たてりおとこ
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①いとうれしくてわかぬる所にゐていり
②てねひとつよりうしみつまてあるに
③またなにこと✼もかたらはぬにかへり
④にけりおとこいとかなしくてねす
⑤なりにけりつとめていふかしけれと
⑥わか人をやるへきにしあらねは
⑦いと心もとなくてまちをれはあけ
⑧はなれてしはしあるに女のもと
⑨よりことはゝなくて
[古今]
⑩ きみやこし我やゆきけむおもほえす
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① 夢かうつゝかねてかさめてか
②おとこいといたうなきてよめる
[古今]
③ かきくらす心のやみにまとひにき
[一説よひと]
④ ゆめうつゝとはこよひさためよ
⑤とよみてやりてかりにいてぬ野に
⑥ありけと心はそらにてこよひた
⑦に人しつめていとゝくあはむと思
⑧にくにのかみいつきの宮のかみか
⑨けたるかりのつかひありときゝて
⑩夜ひとよさけのみしけれは
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①もはらあひこともえせてあけは
②おはりのくにへたちなむとすれは
③をとこも人しれすちのなみたを
④なかせとえあはす夜やう\/あけ
⑤なむとするほとに女かたより
⑥いたすさかつきのさらに哥をかきて
⑦いたしたりとりてみれは
⑧ かち人のわたれとぬれぬえにしあれは
⑨とかきてすゑはなしそのさかつき
⑩のさらについまつのすみしてうたの
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①すゑをかきつく
② 又あふさかのせきはこえなん
③とてあくれはおはりのくにへこえにけり
④齋宮は水のおの御時文德天皇の
⑤御むすめこれたかのみこのいもうと
恬子内親王
✼この部分、小林茂美氏の翻刻(新典社「影印校注古典叢書6伊勢物語」)では『またなにことゝも』となっているが、「伊勢物語の研究 校本篇」(池田亀鑑)・「岩波古典文学大系」(大津有一・築島裕)はいずれも『またなにことも』と翻刻している。画像では微妙だが、河野美術館本や冷泉為和筆本を見ても池田亀鑑氏らの翻刻が妥当か。
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【静嘉堂文庫本】P92~98
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①昔おとこ有けりそのおとこ伊勢のくにゝ
②かりのつかひにいきけるにかのいせの
③齋宮なりける人のおやつねのつかひより
④はこの人よくいたはれといひやれりけれは
⑤おやのことなりけれはいとねむころにいた
⑥はりけりあしたにはかりにいたしたてゝ
⑦やりゆふさりはかへりつゝそこにこさせけり
⑧かくてねむころにいたつきけり二日といふ夜
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[いとイ]
①おとこわれてあはむといふ女もはたあはし
②ともおもへらすされと人めしけゝれはえ
③あはすつかひさねとある人なれは
[イ無]
④とをくもやとさす女のねやもちかくあり
⑤けれは女ひとをしつめてねひとつ許
⑥におとこのもとにきたりけりおとこはた
⑦ねられさりけれはとの方を見いたしてふ
⑧せるに月のおほろなるにちひさき
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①わらはをさきにたてゝ人たてりおとこ
②いとうれしくてわかぬるところにゐていり
③てねひとつよりうしみつまてあるにまた
④なにこともかたらはぬにかへりにけりおとこ
⑤いとかなしくてねすなりにけりつとめて
⑥いふかしけれとわか人をやるへきにしあらね
⑦はいと心もとなくてまちをれはあけはなれ
⑧てしはしあるに女のもとよりことはゝなくて
⑨ きみやこしわれやゆきけむおもほえす
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① 夢かうつゝかねてかさめてか
②おとこいといたうなきてよめる
③ かきくらす心のやみにまとひにき
[一説よひと]
④ ゆめうつゝとはこよひさためよ
⑤とよみてやりてかりにいてぬ野にありけと
⑥心はそらにてこよひたに人しつめていと
⑦とくあはむとおもふにくにのかみいつき
⑧の宮のかみかけたるかりのつかひありときゝて
⑨よひとよさけのみしけれはもはらあひ
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①事もえせてあけはおはりのくにへた
②ちなむとすれはおとこも人しれすちの
③なみたをなかせとえあはす夜やう\/
④あけなむとするほとに女かたよりいた
⑤すさかつきのさらにうたをかきていた
⑥したりとりて見れは
⑦ かち人のわたれとぬれぬえにしあれは
⑧とかきてすゑはなしそのさか月のさらに
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①ついまつのすみしてうたのすゑをかきつく
② 又あふさかのせきはこえなむ
③とてあくれはおはりのくにへこえにけり
④齋宮は水のおの御時文德天皇の御女
⑤これたかのみこのいもうと
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《異同㈠》
A.河野美術館本43丁表①……はたいとあはしとも
[イ無]
学習院大蔵本49丁裏①……はたいとあはしとも
[いとイ]
静嘉堂文庫本P94①…………はたあはしとも
[はたいとあはしとも━━天学習・天河野・天冷泉・天細川・根九家・根良経・根千葉・根文暦・根為相・根承久・塗民局・参為家・非通具
はたあはしとも━━武静嘉・武尊鎮・定嵯峨・根智蘊・根理家・非藤房
はたいともてはなれても━━大谷森・大阿波
いともてはなれてしも━━大為氏
はたいなにはあらされとも━━非実践]
※静嘉堂文庫本の校異の書込みは朱書きとのことで影印本では確認できないが山田清市氏の翻刻(古典文庫229)により補った。
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B.河野美術館本43丁表④……ねやちかく
学習院大蔵本49丁裏④……ねやちかく
[イ無]
静嘉堂文庫本P94④…………ねやもちかく
[ねやちかく━━天学習・天河野・天冷泉・天細川・大為氏・大谷森・大阿波・塗民局・参為家
ねやもちかく━━武静嘉・武尊鎮・定嵯峨・根九家・根良経・根智蘊・根理家・根千葉・根文暦・根為相・根承久・非通具・非藤房
女の閨をなむ━━非実践]
※静嘉堂文庫本の校異の書込みは朱書きとのことで影印本では確認できないが山田清市氏の翻刻(古典文庫229)により補った。
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《異同㈡》無し
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《異同㈢》
A.河野美術館本44丁表⑧……をとこ
学習院大蔵本51丁表③……をとこ
静嘉堂文庫本P97②…………おとこ
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宮内庁書陵部蔵冷泉為和筆本第69段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/04/02/220506
九州大学図書館蔵伝三条西実隆筆細川文庫本第69段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/04/26/222341
伝青蓮院尊鎮親王筆本第69段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/06/10/084306
九州大学図書館蔵伝藤原為家筆細川文庫本第69段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/10/13/143029