伊勢物語翻字 by 片島諒

伊勢物語各種影印本の翻字を行います

①河野美術館蔵実隆筆本・第六段《しらたまかなにそと人のとひし時》

【河野美術館蔵実隆筆本】4丁裏~6丁表
⑦むかしおとこありけり女のえうましかり
⑧けるをとしをへてよはひわたりけるを
⑨からうしてぬすみいてゝいとくらきにきけり
⑩あくたかはといふ河をゐていきけれは草の
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①うへにをきたりけるつゆをかれはなにそと
②なんおとこにとひけるゆくさきおほく夜も
③ふけにけれはおにある所ともしらて神さへ
④いといみしうなりあめもいたうふりけれは
⑤あはらなるくらに女をはおくにをしいれ
⑥ておとこゆみやなくひをおひてとくちにをり
⑦はや夜もあけなんと思つゝゐたりけるにお
⑧にはやひとくちにくひてけりあなやといひ
⑨けれと神なるさはきにえきかさりけりやう\/
⑩夜もあけゆくに見れはゐてこし女もなし
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①あしすりをしてなけともかひなし
②  しらたまかなにそと人のとひし時
③  つゆとこたへてきえなましものを
  高子元慶元年正月為中宮卅六
④これは二条のきさきのいとこの女御の御
⑤もとにつかうまつるやうにてゐたまへりける
⑥をかたちのいとめてたくおはしけれはぬす
                 昭宣公
⑦みておひていてたりけるを御せうとほり
⑧かはのおとゝたらうくにつねの大納言また
⑨下らうにて内へまいりたまふにいみしうなく
⑩人あるをきゝつけてとゝめてとりかへしたま
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①うてけりそれをかくおにとはいふなりけりま
②たいとわかうてきさきのたゝにおはしける
③時とや

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学習院大学蔵伝定家筆本】5丁裏~7丁表
③むかしおとこありけり女のえうま
④しかりけるをとしをへてよはひわ
⑤たりけるをからうしてぬすみいてゝ
⑥いとくらきにきけりあくたかはと
⑦いふ河をゐていきけれは草の
⑧うへにをきたりけるつゆをかれは
⑨なにそとなんおとこにとひける
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①ゆくさきおほく夜もふけにけれ
②はおにある所ともしらて神さへ
③いといみしうなりあめもいたう
④ふりけれはあはらなるくらに
⑤女をはおくにをしいれておとこ
⑥ゆみやなくひをおひてとくちに
⑦をりはや夜もあけなんと思つゝ
⑧ゐたりけるにおにはやひとくちに
⑨くひてけりあなやといひけれと
⑩神なるさはきにえきかさりけり
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①やう\/夜もあけゆくに見れは
②ゐてこし女もなしあしすり
③をしてなけともかひなし
④  しらたまかなにそと人のとひし時
⑤  つゆとこたへてきえなましものを
    髙子 元慶元年正月為中宮卅六
⑥これは二条のきさきのいとこの女御
⑦の御もとにつかうまつるやうにてゐた
⑧まへりけるをかたちのいとめてたく
⑨おはしけれはぬすみておひて
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            昭宣公
①いてたりけるを御せうとほりかはの
②おとゝたらうくにつねの大納言ま
③た下らうにて内へまいりたまふに
④いみしうなく人あるをきゝつけて
⑤とゝめてとりかへしたまうてけり
⑥それをかくおにとはいふなりけり
⑦またいとわかうてきさきのたゝに
⑧おはしける時とや

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静嘉堂文庫本】P8~11
⑦昔おとこありけり女のえうましかりけるを
⑧としをへてよはひわたりけるをからうして
⑨ぬすみいてゝいとくらきにきけりあくた河といふかはを
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①ゐていきけれはくさのうへにをきたりけるつゆ
②をかれはなにそとなむおとこにとひける
③ゆくさきおほく夜もふけにけれはおにある
④所ともしらて神さへいといみしうなりあめも
⑤いたうふりけれはあはらなるくらに女をは
⑥おくにをしいれておとこゆみやなくひをおひ
⑦てとくちにをりはや夜もあけなむと思つゝ
⑧ゐたりけるにおにはやひとくちにくひてけり
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①あなやといひけれと神なるさはきにえきか
②さりけりやう\/夜もあけゆくに見れはゐて
③こし女もなしあしすりをしてなけともかひなし
④  しらたまかなにそと人のとひし時
⑤  つゆとこたへてきえなましものを
⑥これは二条のきさきのいとこの女御の御もとに
⑦つかうまつるやうにてゐたまへりけるをかたち
⑧のいとめてたくおはしけれはぬすみておひて
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①いてたりけるを御せうとほりかはのおとゝたらう
②くにつねの大納言また下らうにて内へまいり
③たまふにいみしうなく人あるをきゝつけて
④とゝめてとりかへしたまうてけりそれをかく
⑤おにとはいふなりけりまたいとわかうてきさき
⑥のたゝにおはしける時とや

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《異同㈠》無し

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《異同㈡》無し

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《異同㈢》無し

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宮内庁書陵部蔵冷泉為和筆本第6段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/03/26/045046
九州大学図書館蔵伝三条西実隆筆細川文庫本第6段
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伝青蓮院尊鎮親王筆本第6段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/05/08/202732
九州大学図書館蔵伝藤原為家筆細川文庫本第6段
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/08/12/123430