伊勢物語翻刻 by 片島諒

伊勢物語各種影印本の翻刻を行います

④伝青蓮院尊鎮親王筆本について

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伝青蓮院尊鎮親王筆本は山田清市氏によって武田本系の善本とされる写本。

尊鎮親王(1504~1550年)は後柏原天皇の皇子で天台座主も務めた人。父後柏原天皇が定家筆武田本を書写した一次写本の後柏原天皇宸筆本をさらに書写した二次写本がこの本とのこと。静嘉堂文庫本も同じく後柏原天皇宸筆本を書写した兄弟本とされる。現在定家自筆武田本もその一次写本も伝わっていないので武田本系では二次写本が最善本とされる。

池田亀鑑「伊勢物語に就きての研究 校本篇」には静嘉堂文庫本も尊鎮親王筆本も載っていないのでいずれも比較的新しく発見された写本と思われるが、発見の経緯や伝写過程についての考察は静嘉堂文庫本や尊鎮親王筆本の解題(山田清市)には何も書かれておらず、尊鎮親王筆本については「架蔵の」とあるのみ。
この本の山田清市氏の解題は12ページのうち尊鎮親王筆本について述べているのは3ページ足らずでこの本とは直接関係の無い別の写本の系統に関する自説の展開が半分以上を占めている異様さで、もう少し読者の身になって書いて欲しかったと思う。

伝青蓮院尊鎮親王筆本とされるのは古筆了佐琴山による極札があるためのようで奥書に筆者名は書かれていない。「書の日本史 第四巻 室町/戦国」(平凡社教育産業センター編、1975年、平凡社)P38掲載の尊鎮親王の書状と比較すると似てはいるが微妙な違いもあり同一人物の字体のゆれの範囲に収まるかどうか何とも言えない感じなので尊鎮親王真筆かどうかは保留としたい。

ただこの写本は私の印象では静嘉堂文庫本よりも誤写も少なく判読できない字もほとんど無くて良質の写本と思う。

原本は縦25.3cm、横17.5cmとのことで、影印本(おうふう刊、1977年)は縦26.1cm横18.4cmなのでほぼ原寸大で、私の所持する伊勢物語影印本の中では最も大きく読みやすい。

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はじめに
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2016/09/23/233024
河野美術館蔵三条西実隆筆本について
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宮内庁書陵部蔵冷泉為和筆本について
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/03/23/151026
九州大学図書館蔵伝三条西実隆筆細川文庫本について
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.com/entry/2017/04/14/030719