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伊勢物語翻刻 by 片島諒

伊勢物語各種影印本の翻刻を行います

①河野美術館蔵実隆筆本・第八十一段《しほかまにいつかきにけむあさなきに》

【河野美術館本】50丁裏~51丁裏
源融 嵯峨第十二源氏 母正五位下大原全子
貞觀十四年八月卄五日任左大臣 元大納言五十一
仁和三年従一位 寬平元年輦車七年八月薨七十三
④むかし左のおほいまうちきみいまそかり
⑤けりかも河のほとりに六條わたりに家を
⑥いとおもしろくつくりてすみたまひけり
⑦神な月のつこもりかたきくの花うつろひ
⑧さかりなるにもみちのちくさに見ゆる
_____________________
①おりみこたちおはしまさせて夜ひとよ
②さけのみしあそひてよあけもてゆくほ
③とにこのとのゝおもしろきをほむるうた
④よむそこにありけるかたゐをきなたい
⑤しきのしたにはひありきて人にみなよ
⑥ませはてゝよめる
⑦  しほかまにいつかきにけむあさなきに
⑧  つりするふねはこゝによらなん
⑨となむよみけるはみちのくにゝいきたり
⑩けるにあやしくおもしろき所\/おほかり
_____________________
①けりわかみかと六十よこくの中にしほかま
②といふ所ににたるところなかりけりされは
③なむかのおきなさらにこゝをめてゝしほ
④かまにいつかきにけむとよめりける

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学習院大学蔵伝定家筆本】58丁裏~59丁裏
源融嵯峨第十二源氏母正五位下大原全子
貞觀十四年八月卄五日任左大臣元大納言五十一
仁和三年従一位寬平元年輦車七年八月薨七十三
③むかし左のおほいまうちきみいま
④そかりけりけりかも河のほとりに六條
⑤わたりに家をいとおもしろくつ
⑥くりてすみたまひけり神な月の
⑦つこもりかたきくの花うつろひさ
⑧かりなるにもみちのちくさに見
_____________________
①ゆるおりみこたちおはしまさせて
②夜ひとよさけのみしあそひて
③よあけもてゆくほとにこのとのゝ
④おもしろきをほむるうたよむそ
            [いた]
⑤こにありけるかたゐをきなたい
⑥しきのしたにはひありきて人に
⑦みなよませはてゝよめる
⑧  しほかまにいつかきにけむあさなきに
⑨  つりするふねはこゝによらなん
_____________________
①となむよみけるはみちのくにゝいき
②たりけるにあやしくおもしろき所\/
③おほかりけりわかみかと六十よこく
④の中にしほかまといふ所ににたる
⑤ところなかりけりされはなむかの
⑥おきなさらにこゝをめてゝ〝しほ〟✼
⑦しほかまにいつかきにけむと
⑧よめりける

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静嘉堂文庫本】P111~113
源融嵯峨第十二源氏母正五位下大原全子
貞觀十四年八月卄五日左大臣元大納言五十一
仁和三年従一位寬平七年薨七十三
⑥むかし左のおほいまうちきみいまそかりけり
⑦かもかはのほとりに六條わたりに家をいと
⑧おもしろくつくりてすみたまひけり神な月
⑨のつこもりかたきくの花うつろひさかりなるに
_____________________
①もみちのちくさに見ゆるおりみこたちおは
②しまさせて夜ひとよさけのみしあそひて
③夜あけもてゆくほとにこのとのゝおもし
④ろきをほむるうたよむそこにありけ
⑤るかたゐをきなたいしきのしたには
⑥ひありきて人にみなよませはてゝよめる
⑦  しほかまにいつかきにけむあさなきに
⑧  つりする舟はこゝによらなむ
⑨となむよみけるみちのくにゝいきたりけるに
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①あやしくおもしろきところ\/おほかりけり
②わかみかと六十よこくの中にしほかまと
③いふ所にゝたるところなかりけりされはな
④むかのおきなさらにこゝをめてゝしほか
⑤まにいつかきにけむとよめりける

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《異同㈠》
A.河野美術館本51丁表⑨……となむよみけるは
 学習院大蔵本59丁裏①……となむよみけるは
 静嘉堂文庫本P112⑨………となむよみける
[よみけるは━━天学習・天河野・天冷泉・天細川・根九家・根理家・根千葉・根承久・大谷森・大阿波
 よみける━━武静嘉・武尊鎮・定嵯峨・根良経・根智蘊・根文暦・根為相・参為家・非通具・非藤房・非実践(この後の文無し)
 よめるは━━塗民局
 (無し)━━大為氏]

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《異同㈡》

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《異同㈢》

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《備考》
★✼学習院大蔵本のこの位置には画像のように『しほ』が書かれていて次の行の頭の『しほ』とダブっているのだが、小林茂美氏はここにミセケチの印を付け、注には墨滅とも書いている。
このミセケチ或いは墨滅は影印本では確認できないのだが、冷泉為和筆本にも同じ位置にダブって『しほ』が書かれ、鈴木知太郎氏が古典文庫64の解説で〈朱の斜線で「みせけち」〉と書いているのでミセケチがあるものと推定した。
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